タイトル通りの本でないようです。
本書を読んだ印象としては、タイトルにあるような内容とは、ちょっと違うなという印象でした。
「脳科学的に正しい読書法」とあったので、読書をすることで脳機能にどのような影響を与えるのかとか、脳の機能をうまく活用した読書の方法などが書いてあるものと思ったのですが、どうやらそういう内容ではないようです。
この本の筆者は、テレビなどでもよく見かける脳科学者の茂木健一郎さんですが、内容的には全く科学的らしくないものになっています。
はっきり言うならば、「茂木健一郎さんの考えている読書とは?」といった内容なので、タイトルから本の内容を期待して読んだ人にとっては、まったく意に添わない印象を持つこともあるかもしれません。
本を読むことの意味
脳科学と読書の関係性という意味では、第1章がそれにあたります。そして第2章から最終章までは、筆者の主観的な読書することの意味が書かれています。
「脳科学的に正しい」というタイトルから想像されるような内容、つまり脳機能と読書の関連性を知りたければ、この本では第1章を読むだけで事足りると思われます。
この第1章では、読書をすることで、集中力が増したり、ストレスが緩和されたり、認知症を予防したりする効果があると説明しています。
また、本がたくさんある家庭の子供は、その子が本を読むか読まないかに関係なく、学力が高い傾向がみられるといった話もありました。
これらは、研究による結果として報告されていることなのだそうですが、個人的な感想としては、いまいちエビデンスに欠けていると感じなくもありませんでした。
残念なことに、そこが科学者が書いた本でありながら、科学的ではないと感じてしまうところになっている気がしています。
筆者の茂木健一郎さんは、本を読むことが好きそうだということは、本書から伝わってきます。
特に『赤毛のアン』については、本書の中で何度も登場してきて、筆者にとって『赤毛のアン』は特別な本なのだろうというのが感じられました。
筆者の考えによると、本を読む効果には、「考える力が身についたり」、「コミュニケーション能力が高まったり」、「いろんな疑似体験をすることができる」といった効果が得られると考えているようです。
しかしそれらの考えは、あくまでも筆者の主観的なものであり、根拠となるような実験であったり科学的な証明みたいなものは、特になさそうです。少なくともこの本の中では、そこまで具体的な根拠の説明はされていません。
願わくば、科学者らしく、科学的な説明で、これらの効果を説明してもらえるとよかったのかなと思っています。
正直この本は、あきらかにタイトル負けしているように思えてなりませんでした。