健康長寿の実践書。
「できるだけ健康で長生きしたい。」そう考えている人は多いものです。でもそれは、簡単なようでなかなかできることではないのかもしれない。
たとえば、「人生の最後は、病院で迎えることになるのだろう。」とか、「認知症を患ったり、身体が不自由になることで、老後は介護状態になってしまうのではないか。」といった不安を感じている人も少なくありません。
また中には、身内を介護している、もしくは介護してきた経験があり、もしかしたらいつか自分もそうことになるのかもしれないと感じている人もいるかもしれません。
私たちは、長生きすること以上に、「最後まで健康なまま生きることができるのだろうか」という不安を抱えている。もしかすると、それが老後に対する最も大きな不安なのかもしれません。
しかし最近では、健康で長生きするための科学的アプローチ法がいろいろと進んできていて、実際にその方法を取り入れながら、健康で長生きしようと考えている人たちがいます。
もっと言えば、できるだけ『若さを保ったまま』長生きしようと考えている人たちもいます。
その人たちの代表例がシリコンバレーのテック起業家だと言われています。彼らは、不老長寿を手に入れることに繋がる様々な研究に、多額の資金を投資をしていると言われています。
そしてこの本の著者は、そんな健康に敏感なシリコンバレーのテック起業家たちに対して、顧問医となって、健康長寿のためのアドバイスをしているという話でした。
そのアドバイスとは、『バイオハック』と呼ばれる、身体の内外の環境を整えて、主体的に健康の最適化を図る手法なのだそうです。
つまり、健康を自分自身でコントロールができるようになるために、科学的に考えられた方法で、実践するためのノウハウをアドバイスしているということでした。
そしてこの本の内容は、そのアドバイスの話となります。食事法や体調管理といった体の内側の話はもちろんのこと、心やストレスといった精神的な部分まで、幅広く網羅的に、健康維持のために必要な科学的なコントロール方法が紹介されています。
エネルギーを高める。
筆者が健康を維持するために必要なこととして、エネルギーを高める事をあげています。
身体活動はもちろんのこと、病気や体調不良など対しても、エネルギーが高いことは大切だと言っています。
ゲームにでてくるキャラクターのように、ライフポイントが高ければ、敵に出くわしたときに受けるダメージに対して、対処することができるようになるというわけです。
筆者の考える健康とは何か、それは『逆境への対応力』だと言っています。
考えてみれば全くもってその通りで、健康とは全く病気をしないことではなく、もし病気になっても、すぐに回復することができることが健康なのだと思いました。
私たちが生きていく中で、全く病気にならない、体調不良にもならないということは、絶対にありません。身の回りには、さまざまなウイルスや気候変動、身体の変化などがあり、病気や体調不良を起こさせるものが沢山あります。
そして、それをすべて避けるという事もほぼ不可能なことです。だからこそ不調からの回復力を持つことに意味があるという考え方には、なるほどと感じました。
そして、その健康維持をするためのエネルギーの正体が、私たちの細胞の中に存在するミトコンドリアにあるというのが、本書の説明です。
ミトコンドリアを活性化する。そのための方法が、健康維持のための最初のポイントになっています。
そしてその他、ストレスとの付き合い方や、メンタル、女性特有の体調管理、男性と女性の違い、などさまざまな健康維持のための考え方が解説しています。
運動はやっぱり重要なようです。
本書を通して、「やっぱりか」と思ったのは、とにかく『運動』という言葉が頻繁に出てくることです。
健康維持、そして若さを保つためには、『運動』することが必要という事を、改めて考えさせられました。
ミトコンドリアの活性化やオートファジーの活性化、脳の活性化、ストレスの解消、などなどいろんなところで運動することには効果的があると説明しています。
その他様々な健康の本を読んでみても、『運動』だけは、共通して必要だと書かれているように感じます。
それと、さまざまなところで、よくおすすめの運動として見かけることが多いのが、HIIT(高強度インターバルトレーニング)と言われているものがあり、本書でも推奨している運動の一つになっています。
全力でとりくむ高強度の運動と、回復のための低中強度の運動を交互に行うものなのですが、運動初心者には、なかなかキツイ運動になるのかもしれません。
本書の中でも、今まで運動量が不足していた人がいきなりHIIT運動を始める場合には、医師に相談するなどして、慎重に行うことをすすめています。
また筋肉量が多いほど、長生きする傾向があるといった話も紹介されています。とにかく、『運動すること』はとても大切ということのようです。
本当の意味での健康法?
運動以外にも、食事法や、休息の取り方など、様々な健康法がありますが、実際にはその人によって、やるべきことは違ってくると本書では説明していました。
個々人ごとの違いによって、やるべき健康法は変わってくる。たとえば、炭水化物など糖質を減らすケトジェニックダイエットという方法がありますが、糖質を減らすことで、実際に体重が減る人もいますが、逆に糖質を減らしてはいけない人もいるという注意点があると説明しています。
一般的に良いとされている健康法が、一個人にとっても良いとは、一概に言えないという事の例です。
だからこそ、自分に合った健康法を見つけなければいけない。それが『バイオハック』の重要なところというわけです。
そして、自分に合った健康法を見つけるために、さまざまな健康の数値を追いかけてみることを推奨しています。
本書の中で紹介されているものには、医師の協力が必要であったり、なかなか難しいものもありましたが、誰にでもできそうなこととしては、スマートウォッチなどを利用して、日々の活動量などを測ってみることが挙げられます。
良くたくさん歩くことが推奨されているために、ウォーキングをする時に、歩数計を使って歩数を計測している人がいますが、その歩数と言う数値は違った見方もできるという事が、今回参考になりました。
1日の中で歩数が少ないという事は、椅子に座っている時間が長いという見方もできます。そして、椅子に座っている時間が長いほど、病気や死亡のリスクが高くなると言われています。
つまり、スマートウォッチなどの活動量測定の機器を身について1日を過ごした結果、計測結果の歩数が少ないという事は、1日の中で座っている時間が長く、健康維持のための活動量が不足しているということを意味することになります。
つまり歩数計と言うのは、ウォーキングの時の歩数を測るためのものだけでなく、1日の活動量を測るという意味もあるんだという視点に、新たな気付きを得られたような感覚になりました。
その他の体脂肪率や筋肉量、心拍数といった、自分の体の数値を測るということにも、今の数値として見るのではなく、その数値変化の推移を追いかけることに意味があり、その先に、本当に自分に合っている健康法『バイオハック』があるんだという事をこの本から学ぶことが出来ました。