『エイジング革命』 早野 元詞 (著)

昔、金さん銀さんという100歳を超えた有名な双子がいました。しかし今となっては、その100歳も身近なものになりつつあるようです。

日本人の平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳(2022年)となり、あと数年で100歳を迎えるような人たちがいることを、身近なところでも耳にするようになってきました。

人生100年時代。最近ではお金の話の中でも、このスローガンをよくみかけるようになってきています。

「もし100年生きたらどうするのか?」、ライフプランを考える上でも、長生きするという事が、経済的な大きなリスクとなりつつあります。

それとともに、自活できる健康な状態を保ったままで長生きする、という考えも大切になってきています。いわゆる健康寿命という考え方です。

健康寿命を延ばす、つまりは老化することを抑えたい。しかし、そうは思っていても、いつかは老化することになる。それは当たり前のことだというのが今までの常識でした。

しかし、この本の著者である早野元詞含め、科学者の世界では、「老化は治せる病気」という考え方が広がってきています。

この本では、今行われている老化研究の最先端の話がかかれています。

老化を見える化する。(エイジング・クロック)

老化という言葉を聞くと、しみ、しわ、たるみ、など見た目上の老化と言われる現象を想像します。

でも、「実際の体年齢は何歳?」というのは、よくわからない。体脂肪計や体組成計などで、体年齢などを数値化して見せてくれるものもあるけれど、それが本当の体年齢だとは思えないところも多々あります。

本書に登場するエイジング・クロックという考え方は、まさにそれを見える化した考えかたです。エイジングクロックとは、暦上の年齢とは違う、生物学的年齢を測定することを言います。

今老化のどのへんにいるのか、健康状態としては今何歳ぐらい体なのか、あと何年ぐらいしたら高血圧や腎機能低下などの老化現象が起こり始めるのか、といったことに答えてくれる技術をイメージしているようです。

老化が始まったというタイミングは、はっきりとは見えないし、わからない。でもエイジングクロックで見える化できれば、老化がはじまったという事がはっきりと認識できるようになると考えられています。

血圧や心拍数、血液中のたんぱく質などを測定し、解析することで、生物学的な年齢がわかるようになり、そしてその先にある、老化によって引き起こされる疾患を発症する前に予防することが出来るようになるのではないかと考えているようです。

老化を予防し、がんなどの加齢性疾患にかかることを予防する。

エイジングクロックを科学的に測定できるようなり、老化していることがわかった細胞や遺伝子、組織などを、補ったり入れ替えたりする、老化予防の技術力も高めていくことで、老化を予防することが出来るようになる。

これができるようになったら、本当に老化は治る病気だと言われる時代が来るのかもしれない。

病気になってから治療する医療ではなく、多くの病気を引き起こす老化自体を治してしまうことで、多くの病気を予防する医療へと切り替わっていくようになるのかもしれない。

そうなれば、健康寿命が延び、もちろん寿命そのものも延び、長く活動的な状態を維持する人が増えて、社会そのものも大きく変わることになるかもしれない。

まるで夢の技術のように思うかもしれないけれど、意外と近い未来の話なのかもしれないと思わせてくれる本でした。