『統計学を使って永続的に成長する優良企業を探す クオリティ・グロース投資入門 ──「良い企業」に長期で投資するための勝利の方程式』 山本潤(著)

永続的に成長する会社に投資ができれば、株式投資は成功する。言ってみれば当たり前の話です。

しかし、株式投資の実際の話としては、そんな簡単な話が、なぜか実行できない。そもそも、永続的に成長する会社を探すという事自体がとても難しい。

株式投資をすればするほど、その難しさを実感することになるのではないでしょうか。

そして本書の目的は、その永続的に成長する会社の見つけ方となります。

そもそも株式投資で資本が増えるとはどういうことなのかという話をインカムゲイン(配当金)を中心にすすめ、その後成長する会社とはどういう会社なのかを理解し、そして最後に、投資するに値する成長する企業なのかどうかを判別する答えとなる、方程式(数式)を提示しています。

本書のタイトルに『統計学を使って』という言葉がありましたが、そこはあまり期待しない方が良さそうです。個人的な印象としては、統計的な話はほとんどなかったように感じています。

この本の主な内容は、筆者の考える成長企業の選び方の解説という印象です。「この投資法で勝率や利益率が何%上がるのか」といった数字的根拠やシミュレーションは、全く示されていないのため、統計と言う言葉を期待して手に取ると、がっかりすることもあるかもしれません。

しかし、統計ではないかもしれませんが、筆者自身がファンドマネージャーとして運用を行ってきたパフォーマンスが記載されています。

その数値は、過去25年の年率平均は、およそ17%だと言っています。運用成績としては、最初に投資した資金が25年後には25倍以上になっているのだそうです。

これはとても素晴らしい数値です。同じ25年間のTOPIXが4%台だったことを考えると、かなりの高パフォーマンスだったと言えるのではないでしょうか。

本書は、その高パフォーマンスの神髄ともいえる、成長する企業に投資をする『クオリティ・グロース投資』を解説した本になります。

株式投資をキャピタルゲインではなく、インカムゲインで考える。

株式投資と言えば、株価が大きく上昇することによって得られるリターン、つまりキャピタルゲインに目が向きがちです。

「○○の株価が、何倍になった!」といった話題の方が、配当金よりも注目されることが多いものです。

しかし本書の株式投資の解説は、配当金から始まります。株式投資にとって、配当金という存在がいかにいかに重要なのかを改めで実感する内容でした。

「株価のその時々の状況に左右されずにコツコツとインカムゲインを再投資し、余裕資金を定期的に追加投資していくことが資産形成の王道」だと著者は言っていました。

配当金と言うのは、景気が悪化し企業の業績が低迷しても、支払われていることが多く、日経平均株価というインデックスでみれば、配当金が無配になったことはありません。

また、日経平均で見れば、配当利回りは近年増加傾向あり、それとともに配当金額も増えていいて、さらには、配当金額の推移は、株価の推移ほど極端に動いたりもしません。

著者曰く、「株式の長期投資では、累計のインカムゲインが、資産形成のベースになる」という話です。

この話を聞いて思い出すのが、ジェレミー・シーゲルの著書『株式投資の未来』です。この本では、株式投資のパフォーマンスのほとんどが、実は配当金によるものであるという見解を示していました。

まさに本書で言う、インカムゲインが資産形成のベースになるという話そのものです。

配当やインカムゲインというものについて、あらためてよく考えてみたいと思いました。

本書では、このインデックスという株式市場全体での配当の話から、個別企業の話に移りっていきます。個別の企業がどのように成長していくのか、利益と成長の関係など、いろいろと解説しています。

永続的に成長するクオリティ・グロース銘柄に投資をする。

言われてみれば当たり前のことではあるけれど、もしクオリティグロース銘柄に投資ができるのならば、株式投資で失敗することは、ないと言えるのかもしれません。

ただ、本書の内容は銘柄選別の解説がほとんどで、実践の株式投資には物足りない印象もなくもありませんでした。

分散投資やポートフォリオの管理など、もうちょっと具体的な運用の進め方なんかも触れてくれたらよかったのかもと思わなくもありませんでした。

著者の年利17%の運用方法をもうちょっと具体的に解説してくれていたら、より関心が高まったような気がします。