『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』川北 英隆 (著)
「株式って、そもそも何なの?」ってことさえよくわかっていない。それなのに、オールカントリーとかS&P500とか、株式資産に投資をする投資信託を平気で買っている。
しかも、投資信託を使って株式資産を買うことには大した抵抗感を感じていないのに、『個別株』への投資となると、途端に不安になったりする。
はっきりいって、これは矛盾していることだと思う。
株式資産へ投資をするのなら、投資信託であろうと、個別株投資であろうと、株式のことをもっとよく知っていた方がいいのではないだろうか?
話は変わりますが、かつて、『知っているつもり』という本を読んだことがあります。
本当は知らないことなのに、知っているつもりで考えてしまう。その具体例として挙げられていたのは、水洗トイレの仕組みでした。
レバーを上げれば、水が流れる。簡単なことのようだけど、この水洗トイレの構造を詳細に説明してみてと聞かれたら、答えらえれる人はほとんどいない。
レバーを操作すると、タンクの中のキャップが開き、水が流れ出す。でも同時に水道からも水がでてきて、流れた分の水がタンクにたまる。しかも、一定量の水がタンクにたまると自動で水道からの水は止まる。
一体、どういう仕組みなのでしょうか?
もっと不思議なことを言うのなら、そもそも水という物質が、流れるようになっているのはなぜなのか?
水分子、重力、分子間力?
突き詰めれば突き詰めるほど、わからないことばかり、この世界は、意外と知らないことばかりです。
しかし、私たちはその知らないことを、間に知っている人がいることで、知ったつもりになる。
株式というものをよくわかっていないのに、専門家を間に入れて投資信託という形にすることで、知ったつもりになっている。
そして、株式に投資することへの不安がなくなる。
本当にそれでいいのだろうか?
株式というもののことをもっとよく知ろう!
この本の目的は、株式というもののことをもっとよく知ろうということなのかもしれないと感じました。
株式投資の仕方というよりも、株式とは何なのか。株式に投資をするというのは、どういうことなのか。それを考えるのが、本書の目的なのだと思う。
実際に、この本の著者の具体的な株式投資への感覚は、詳細に企業や株式を調べて、タイミングよく投資をするといったものではなく、とても感覚的な投資をしている印象です。
なんとなく将来性があって、企業として良さそうな株式を買い、あとは保有する。
データや分析といったものよりも、自分の感覚を中心とした投資をしているのではないかと思いました。
でも、感覚的な投資だからと言って、決して失敗しているわけではない。実際に本人もそんなに酷いことにはなっていないと言っている。つまりは、そこそこの成績は残しているということなんだと思う。
詳細にデータをとったり、細かく分析をしたりといったことをしなくたって、たとえ感覚的な投資をしていたのだとしても、株式で儲けることはできる。
それは、株式に投資をするということが、どういうことなのかという本質を理解しているからなんだと思いました。
つまりは、情報量の多さや、データ解析の技術、投資のスキル、なんてものがなくたって、本質さえ理解していれば、株式投資はできる。しかも、そこそこの利益を手にすることだってできるようになる。
株式投資は、意外と単純なものなのかもしれない。
「株式とは、本質的に怖いものではない。」、本書の「はじめに」の中にあった言葉ですが、これが株式投資で最も大切な気づきなのかもしれない。
株式投資は、本当なら楽しむだけでいい。
株に投資して儲けようとか、株式投資でお金持ちになりたいとかいうのは、ちょっと違うものなのかもしれない。
株式投資のノウハウや手法を知ることよりも、株式というものをもっとよく知ることの方が大切だということを考えさせらえた本でした。