投資では、何が利益をもたらしているのか?
「株式投資は長期的に高いリターンをもたらしてくれる。」
という人がいる。でも、ずっと疑問に思ってきた、「高いリターンをもたらす投資であっても、割高な状態で買ってしまっては意味がないのではないか?」と。
そんな疑問に対して、ひとつの答えを与えてくれる本。
期待リターンが予測できるのであれば、期待リターンが高い時に投資した方がいいのは明らかです。そして、期待リターンが低くなっている時(資産価格が割高になっている時)に投資をすると、資産価格が暴落するリスクが高まっているということを考えておかなければいけない。
言われてみれば当たり前の話で、誰にでも簡単にわかることなのですが、実践することはなかなか難しい。
そもそも、『期待リターン』を計測すること自体、とても簡単なことではありません。
投資で得られるリターンはどこから来ているのか?
どんなリスクをとれば、どのくらいのリターンが得られるのか?
投資におけるリターンの疑問に、ひとつひとつ回答してくれています。
ただ、本自体が分厚く、なかなか難しい内容になっている。
数式やファイナンス理論など複雑な話には、なるべく触れないように工夫されている感はあるけれど、読んで理解するのにはハードルが高い印象を持ちました。
辞書や教科書のように、手元に置いておいて、気になった時に気になった項目を読むという感じで利用するのがいいのかもしれません。
ほとんどの人が、序論の1章から2章を読めば(全体で14章まであります)、だいたいこと足りるのかもしれません。
リスクをとればリターンが得られるわけではない?
「リスクの高い投資先は、高いリターンをもたらす。」、「投資では、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンの関係性が成り立っている。」と言われていることがある。
でも本当にそうなのだろうか?、そもそもリターンをもたらすことは、リスクがあるからのものなのだろうか?
本書を読むとわかるが、実はリターンというのは、リスクと表裏一体のものではないようです。投資の中には、とっても意味のないリスクもあるようです。
以前から知っていたものでは、『為替リスク』は、リターンとは関係ないので、為替リスクをとったからと言ってリターンが向上することはないという話がありました。
ですが、あらゆるリスクがリターンと相互に関係性があると考えている人の中には、為替リスクをとればリターンが向上すると説明をしているのを見かけることがあります。
似たような、リターンには関係のない無意味なリスクについても、本書を読むといろいろと気づかされます。
たとえば価格変動の大きな株式も同じような傾向がみられるといっています。実際ヒストリカルなデータを調べると、価格変動つまりはボラティリティが高い銘柄群よりも、ボラティリティが低い銘柄のほうがパフォーマンスがよかったという結果が得られているそうです。
また、通貨間の値動きでは、「金利の高い通貨と金利の低い通貨の関係性を考えると、金利差の分を、金利の高い通貨が値下がりすることで、通貨間の価値をある程度一定に保つようになっている。」と考えられていましたが、実際には、単純に金利の高い通貨を取引するキャリー戦略が、50年にわたって効果的だったという事例も紹介していました。
投資によってもたらされるリターンとは、そもそも何なのか?
それが、『ファクター』と呼ばれているものになる。
投資をするならリターンの源泉である『ファクター』に注目するといい。
この本を読んでもっとも勉強になる点はそこなのかもしれません。
『ファクター』を組み合わせてポートフォリオを組むという投資戦略にも少し触れていましたが、とても興味を掻き立てられる内容でした。
そしてもう一つ、個人的にも投資する際には昔からバリュー投資に代表される『バリュエーション』を気にしてきましたが、本書の中でも度々登場することになる、その『バリュエーション』という指標の価値について改めて考えさせられました。