残念ながら、投資法の本ではありません。

「一生お金に困らない」なんてタイトルであるために、資産運用や投資の良い方法や投資先のことが書いてあるのかと勘違いする人もいるかもしれませんが、全く持ってそういう話ではありませんでした。

投資のノウハウも多少書かれてはいますが、どちらかといえば、自己啓発など精神や心理面での話が主体になっているという印象です。

とはいえ実際に、お金に困らないようになるために必要なものというのは、投資のノウハウよりも、お金との付き合い方や向き合い方の方であったりするものです。

お金に困らないということは、つまりお金に振り回されないということと同意です。

収入が多ければお金に困らないようになれるかというとそういうわけでもありません。本書の中でも具体例として、どんなにお金を持っていても結果的にお金に困ることになった人の例がいくつか紹介されていました。

お金に振り回されないようになるためには、『足るを知る』ということが必要で、どのくらいのお金があれば自分は幸せなのかということがわからなければ、どんなに収入を増やしても、どんなに大きな資産を持っていたとしても、結局お金に困ることになるものです。

この本は、そんなお金との付き合い方を学ぶための本でした。

そのため、お金に困らないようになるための資産運用の方法や投資法を知りたいという人にとっては、少し情報不足のような内容になっています。

ですが、そのお金との付き合い方こそが、お金の話の本質なのかもしれません。

株式投資を推奨しています。

この本は投資のノウハウについては、あまり触れていませんが、結論から言えば、『株式投資を推奨』している感じです。

お金に困らないようになるためには、資産運用はできた方がいい。

その資産運用の手法として、アセットアロケーション。株式や債券、または不動産といった資産に配分して投資をするポートフォリオ運用を薦めています。

とくにその中でも、株式資産を中心とすべきだという考えを持っているようです。

具体的には株式のインデックスファンドを使うイメージなのでしょう。ただ私たち日本で生活している者からの視点では、この本の内容はアメリカ向けだという感じを強く受けます。

金融市場としては、ちょっと特異なところがある日本市場からでは、いまいち感覚がつかみにくい内容なのかもしれないとも思いました。

というのも、日本では、債券市場が以前からおかしくなっているからです。

日本は長年超低金利政策によって、債券投資ではほとんどリターンが期待できない状態になっていて、さらには、日銀の大規模な介入によって、債券市場はすでに市場というにはおかしなぐらいに歪んでしまっています。

つまりは、債券価格の変動が自然のものとは言えなくなってしまっている状態なわけです。

株式資産と債券資産とでポートフォリオを作るのが、基本だと本書では説いていますが、その債券資産のリターンと価格変動が日本では、正常に機能しなくなっているので、理論的なポートフォリオとは程遠いものとなってしまうのではないかと考えています。

とはいえ、本書の運用方法は、株式のインデックスファンドを中心にしたポートフォリオ運用という比較的簡単な運用方法を用いています。

株式資産への投資さえできるならば、実践することは簡単だと思われます。

しかし、株式資産へ投資をするのは、大きな価格変動などリスクが大きい投資にもなるため、なかなか手が出ないということもあることでしょう。

そんな人へ、本書では株式資産に投資をするための心構えを伝えてくれています。

実は、株式投資でもっとも大切なことは、お金との付き合い方と一緒で、知識や技術、ノウハウよりも、精神的なものや心理的なものであったりします。

株式という資産をどのように考え、どう付き合っていくのか、知識やノウハウではなく、精神面、心理面からそれらを重点的に学ぶことができるという点は、他の本にはない本書の良さなのかもしれません。