心にあった株式投資の新しい回答

今、世間に広く受け入れられている資産運用法には問題がある。

積立投資やインデックスタイプの投資信託など、今や資産運用の常識と言われているものたち。こういった資産運用の正し方法と言われているものの多くは、『理屈としてはあっている』のかもしれませんが、私たちが『感情的な考え方をする人間』だという視点が抜けていると感じています。

「相場がどんなに上下しようとも、私たちは、それを気にすることなく、積立投資を長期間にわたって続けていくことが大切です。」

この考え方をもとに、NISAやiDeCoという節税制度まで国は用意しています。

しかし、この「長期間にわたって積立投資を行う」という投資のやり方は、私たち人という感情の生き物にとっては、言うほど簡単ではないと思っています。

仮に、十数年間積立を続けていて、もし投資元本の2倍にまでうまく資産が膨らんだとしても、そこから過去何度も繰り返し起きている金融危機などが起こって、せっかく2倍に膨らんだ資産が半分、もしくは元本割れにでもなったとしたら、私たち人はどんな感情を持つのだろうか?

「積立をやめて、損する前に売ってしまえ!」

「十何年も続けてきて、損することになるのは嫌だ。やめてしまえ。」

などと思ったりはしないだろうか?

私自身も経験がありますが、積立投資の結果は意外とそんなものです。頭でわかっていても、心で分かっていなければ、積立投資は続けられないこともあるのです。

投資や資産運用を上手にやるためには、知識や技術なんかより、この心というもののコントロールが一番の課題なのです。

心との対話、そしてバーゲンハンティング

理屈や理論を抜きにして、心との対話を重視した結果、バーゲンハンティングという投資戦略が正しい投資の仕方ではないかというのが、本書の目的です。

相場の歴史的大底、ここで株式を買うことが出来れば、それはもう「ローリスク、ハイリターン」であることは間違いありません。つまり、普段は現金を貯めて、歴史的大底を狙って株式投資をするという投資の仕方を本書では薦めています。

株式相場が上昇していく中、あせって株式を買う必要はない。歴史を見ればわかる通り、株式市場は、必ず大きく暴落する局面が来る。個人投資家はそこを狙い撃ちするように株式投資をすればいい。

そうすれば、損する金額は小さくなるし、将来また暴落相場が来た時にも、元本割れするまでにはならない可能性の方が高いので安心してみてられる。したがって、売って現金化するタイミングもいつでもかまわない。

だれも反対のしようがないごもっともな意見です。「そんな投資が出来たらいいよな」と誰もが考えます。そういえば、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットも、普段はキャッシュを貯めて、ここぞというタイミングでドンと買うスタイルでした。

暴落した時に買う。それが資産を増やす最も効率的な方法であることは、理屈としてもバフェットなどの著名投資家たちの運用実績からしても間違いないことです。

しかし、それを実践することはとても難しい。そもそも、それが簡単にできるようなら、誰もが大金持ちになれそうです。つまりは、バーゲンハンティングという投資法を使えるのが少数派だからこそ、バーゲンハンティングという投資方法で、金持ちになれるということです。

バーゲンハンティングの難しさは、大きく下落していく局面で買いに行く勇気と、どこが底だかわからない延々と続く苦しい期間を乗り切る忍耐力を必要とすることにあります。それと、バーゲンハンティングを実行するためには、大底まで買い続けられる資金コントロールの技術も必要です。

勇気と忍耐力という精神力、そしてテクニック。バーゲンハンティングに求められてるものは、どれもかなり高度なものです。

本書では、バーゲンハンティングで重要な相場の転換点の見方をいろいろと示していますが、正直いまいち具体性に欠けている気がしました。そもそも、バーゲンハンティングで相場の転換点を見極めるなんてこと自体、『アート』みたいなものです。相場の転換点というのは「こうなれば、こうなる」とは一概に言えないものばかりです。

相場というのは生き物みたいなもので、「今までは、こういう時はこうなったのに、今回はなぜかそうならない」なんてことはしょっちゅうです。それでも過去の経験やデータを信じるか、それとも新しい可能性に賭けるのか、そこはもう『アート』としか言いようがありません。

結局本書を読んでも、バーゲンハンティングの実践まではつながらないことでしょう。でも、バーゲンハンティングのイメージぐらいはつかめるとは思います。

私個人の意見としては、バーゲンハンティングという投資アプローチは、難しかったとしても目指すだけの価値はあるものだと思っています。