『スマートベータ』ってなんだ?

おそらく『スマートベータ』と聞いて、「この言葉を知っている」と思った人は、結構投資や資産運用について調べているひとなのではないかと思います。

まず、スマートベータの『ベータ』が何かというと。いわゆる市場平均のことを指しています。つまりベータとは、「TOPIX」や「S&P500」などのインデックスがその代表例となります。

そしてスマートベータの『スマート』とは、その市場平均にさらに工夫を凝らした『スマート(賢い)』なという意味になり、『スマートベータ』とは、『賢い市場平均』といった意味になります。

しかし、ベータ(市場平均)といっても、何を市場の平均とするのかという問題があります。株式市場全体の時価総額使うにしても、分母は何で計算するのか、単元株を基準に計算したほうがいいのか、株式分割などの時はどうすればいいのかなど、一概に平均と言ってもいろんな考え方があります。

そこで、本書では、まずその市場平均である『ベータ』の定義についての説明から始まります。

考えてみれば『スマート(賢い)』といっても、何に対して賢いのかが分からなければ、話が進まないことと思います。

そこで、一般的に使われている『ベータ』に対し問題点を提起しています。

そしてその「ベータのどこをどうすると『スマート(賢い)』になれるのか」という流れで考察しています。

世間では、「投資と言えば、インデックスファンド」というように、市場平均に投資をする投資方法が流行っています。しかし、盲目的にインデックスファンドに投資をしている人にとって、きっとこの本の内容は目から鱗の話になることと思います。

個人的にも、この本の内容は知っておいて損がない話だと思いました。

インデックスとスマートベータ

まず一般的に言われている『ベータ』というのは、『時価総額加重平均型』の株価指数が使われているというところから始まります。

そして時価総額加重平均型の株価指数には、いくつか問題点があると提起しています。

時価総額加重平均型というのは、時価総額が大きい株式に株価指数が偏りやすいという問題が挙げられます。たとえば、すでに割高になっている株式銘柄や、一部の大型株に偏りやすくなっていることになります。

一部の銘柄に偏りやすくなっているということは、『分散投資の効果を薄くしてしまっている』のではないかと考えています。

そしてさらに、問題なのが、株式市場では、本質的価値と比較して安いとされるバリュー株や、時価総額の小さい小型株への投資が、市場平均よりも高いパフォーマンスを発揮しているというデータがあることです。

このような高いパフォーマンスが期待できる分類をファクターと呼び、『割安株効果』や『小型株効果』などと言われています。

これらのファクターで分類される銘柄は、時価総額加重平均型の中ではシェアが小さくなることが多く、時価総額加重平均型のインデックスでは、ほとんどファクター効果を受けられらなくなります。

となれば、賢い市場平均を作るならば、割高、大型株に偏った市場平均から、よりパフォーマンスを発揮しやすいファクターの考えを取り入れた株価指数を作った方がいいのではないかということで、『スマートベータ』という考え方に反映されてきたわけです。

市場平均の仕組みと裏側を知って、あたらしい着眼点で、あたらしい市場平均を探す。このようなアプローチ方法が『スマートベータ』という事です。

本書の中では、より細かく新しい市場平均を探すための着眼点を教えてくれています。株式市場へのアプローチの仕方として、とても勉強になりました。

そして現在、『スマートベータ』へ投資をする方法は、ETFや投資信託などで実際に投資をすることができます。

ただ、いつどの『スマートベータ』を使うことでパフォーマンスを上げられるのか、『スマートベータ』への分散投資は有効なのかといったことも知っていないと、ちゃんと『スマートベータ』を使いこなすことができないという意味で、この本は『取扱説明書』というタイトルになっているようです。

『スマートベータ』への投資を考えている人はもちろんのこと、株式市場でインデックス以上のパフォーマンスを上げるためのアプローチの仕方として、参考になることが書いてある本です。