投資信託の現実は、なかなか厳しい?
タイトルが「不都合な真実」というぐらいなので、当然のように投資信託に対して否定的な内容が書かれています。
しかし、その否定的な意見の矛先は、投資信託という商品自体ではなく投資信託の運営にかかわっている、たくさんの金融機関に対してのもののように感じます。
たとえば、投資信託を売ることで最も手数料を稼いでいるのは、どの金融機関だと思いますか?
① 預かったお金を投資・運用している機関投資家。
② 投資信託の販売窓口をしている金融機関。
③ 運用資金を管理している信託銀行なのどの金融機関。
多くの人が、①の機関投資家をイメージするのではないでしょうか?
投資信託のメリットとして説明する中に、「プロが投資先を選別し、運用しています。」と言っていることがありますが、実際にはそのプロへの報酬は、投資信託にかかる費用の中でそれほど高くはないようです。
では、誰が一番手数料をもらっているのかというと、実は②の販売している金融機関となっています。
そのため、多くの投資信託は、販売窓口の金融機関が、『売りやすいように作られている』という真実があるのだそうです。
しかし、金融機関が売りやすい投資商品というのは、ほとんどの場合において、良い投資先ではなくなることが多くなるものです。人気のある投資先というのは、多くの場合、後に散々な結果になってしまうことが多々見受けられます。
地味で目立たないぐらいの投資先の方が、意外と良い結果が出やすいものだったりするのですが、そういうモノはあまり売れないので、投資信託として商品化されにくいというわけです。
複利、平均リターン、長期投資、ポートフォリオ、これらの話はすべてデマ?
投資信託が売られる中で、「複利」や「平均リターン」、「長期投資」といった言葉を使うことがありますが、これらの話の真実とは?
実は、これらの言葉は間違って伝わっている可能性が高いと筆者は考えています。
ちょっと名の知れたファイナンシャルプランナーなども、これらの言葉を使って、資産運用を得意げに話していることがありますが、これらのファイナンシャルプランナーは、金融についてちょっと知っている程度の可能性が高いと言っています。
個人的な経験から考えても、株式などのリスク性の高い金融商品での運用に関して「複利」というのは実感があまりない。
株式投資の複利でのパフォーマンスというのは、今の時点から『過去』にさかのぼって複利での計算をしてみたら、というだけの話であって、今から『将来』にわたってというモノではないと感じています。
本書の筆者も同じ意見だったようです。
「複利」というのは、利益がマイナスになることがない、国債や預金といったもので運用した場合に当てはまる話しであり、時にマイナスのリターンになることがあるリスク性の金融商品には当てはまらないと言っています。
またそれと同様に「平均リターン」という言葉も間違って伝わっている可能性が高いとも説明しています。そもそも「平均リターン」という数字を使うことが正しい事なのかという疑問を投げかけています。
他にも、「長期投資ならリスクが少なくなる」という話は間違いであることや、いろんな資産に分散投資してリスクを減らすというポートフォリオの話よりも、リスク性の資産にどのくらい投資をしているのかという資産配分の話の方が大切という意見など、どれも実体験からしてもごもっともな話だと思いました。
もっと言うなら、私がこれまで経験してきた投資体験からみた意見と全く同じです。
投資信託で資産形成しようと考える人が、もし本書を手に取って読んでしまうと、途端に投資を始める気持ちがなくなってしまうことがあるかもしれません。
でも、これはとても大切な話だと思います。ちょっと知っているだけのファイナンシャルプランナーなどが話す、理論や理屈の話よりも、こういう実感的な真実の話の方が将来役に立つことは間違いありません。
自分から学ぼうという気がない人は、投資で資産形成をしようなんて考えない方が良い。
本書の筆者も、本の最後で似たようなことを言っていました。
投資信託を売りたいという意図からなのか、「すべてお任せでOKです。」とか「知識やノウハウがなくても投資ができます。」などという言葉をあちこちで見かけますが、これらの話は真に受けないのが正解だと思います。
投資や資産運用には、結局最後は自分次第という所がある。自己責任とは、損失を負う覚悟ではなく、そこ(学ぶ姿勢)にあるのだと思っています。