身近なお金の物語。

この本は、お金にまつわる家族の物語です。

特に、びっくりさせられるような大事件が起きたり、爽快な問題解決があったりするような、どきどきわくわくさせられる物語とはちょっと違う。

どこかで聞いたことのあるような日常が、悪く言えばだらだらと書かれているような物語です。

『お金というのは、人生を表している。』この物語を読むと、そのことを強く意識させられます。

この本の中の登場人物たちは、どこにでもいる一般的な感覚の人たちだと思います。行ってみれば、すごく私たちに近い存在。

その人たちが、仕事、友人、結婚、老後、離婚、いろんな人生の節目で、お金というものに振り回されている。

そして、それは私たちにとっても、現実的な世界でもあります。

お金についての、知識やお金持ちの考え方を学びたいと思って読むような本ではないかもしれない。

もちろん、爽快な物語でもないかもしれない。

それなのに、なぜか続きが気になってしまい、ついつい読んでしまう。

それは、この物語が、あまりにも私たちの日常に近く、まるで他人の家庭を覗き見ているかような感覚になるからなのかもしれません。

三千円の使いかたって深い。

結局、お金の使い方は、その人の人生そのものなのかもしれない。

金額にしたら、たったの三千円なのかもしれない。けれどその三千円の使い方で、その人の人生が変わってくることもある。

別にこの本は、節約しよう、貯金しようとは言っていない。でも、お金への感じ方や考え方しだいで、人の生き方も変わってくるということを考えずにはいられない話でした。

冒頭で出てくる「三千円の使い方で人生が決まるよ」という言葉が最後まで頭から離れませんでした。

私たちは、お金のことをすごく気にしながら生きています。

お金のことを気にせずに生きられる人なんているのでしょうか?

たとえ裕福なお金持ちであっても、無制限にお金を使うような人は、本当にごくごく少数で、ほとんどのお金持ちが、「今あるお金を減らさないようにするには?」などと気にしていたりするものです。

そして、仕事だって、友人関係だって、家族のことだって、人生のほとんどが『お金』と結びついている。

この本を読むとそのことがよくわかる。というよりも、普段あまり意識していなかった部分が洗い出された感じがしました。

節約や貯蓄よりも、お金の使いかたの方が大切なことなのかもしれない。

そもそも、本書の最後にもあるように、「お金や節約は、人が幸せになるためのもの。」ということがもっとも大切なことなのだということを改めて考えさせられました。