確定拠出年金制度を使うことが基本戦略?
本書を読んで思うところの一つとして、『確定拠出年金制度』を積極的に活用するという点が挙げられます。
確定拠出年金制度を活用するメリットといえば、節税しながら運用ができるという点です。たとえば、日本の確定拠出年金制度といえばiDeCoが有名ですが、iDeCoでは、拠出額すべてが所得控除として利用でき、所得税や住民税が節税できるというメリットがあります。
本書では、この確定拠出年金制度を徹底活用することでリッチな生活に入れる資産を築くことが出来るといっています。
確かに、確定拠出年金制度では、節税になる税額を考えただけでも、大きなリターンになりえることは、日本でも有名な話です。ただ、そこには日本とアメリカの確定拠出年金制度の違いという落とし穴もあるので注意が必要です。
確定拠出年金制度を徹底活用して、資産額が増えても、現役期間中は一切そのお金を利用できない日本と違い、アメリカでは、一定のペナルティはあるものの、老後を迎える前でも途中で引き出すことが可能となっています。
そのため、日米の確定拠出年金制度は、日本では老後のためでしかないのですが、アメリカでは、老後だけでなく現役期間中も含めて資産形成のために利用できる制度になっています。
本書の内容は、アメリカの確定拠出年金制度の中での話だと思われます。つまり、日本で確定拠出年金制度を利用しても、本書のようにはならないと思って間違いありません。
日本の老後にしか引き出せない制度のもとでは、確定拠出年金で積立てた金額が、どんなに大きく育ったとしても、使えるようになるのは所詮老後以降です。
そのお金を使って、リッチな生活に入れるようになるのは、どんなに早くても65歳以降ということになります。
本書の著者のように、早い段階でのリッチな生活というのは不可能だと思われます。
おそらくこの本を読もうと考える読者の多くが、老後前にリッチな生活に入りたいと思って、この本を手にするのではないかと思います。
そうなると、老後にしかリッチな生活に入れない日本の確定拠出年金制度では、全く持って使えないということになりそうです。
残念ながら、その点ではあまり参考にはならない内容なのかもしれません。
資産形成を自動化する。
本書には、確定拠出年金制度を活用して資産形成を進める以外にも重要なポイントがあります。
それは、資産形成の自動化及びシステム化です。
リッチな生活に入るための、資産形成に必要なことは、大きく分けて、貯蓄をすることと、投資をすることの2点です。
この貯蓄と投資をシステム化し、無意識で自動的に資産が築かれていくようにするということを説いています。
貯蓄を進めるために、どう家計をコントロール及びシステム化すればいいのか、そしてその貯蓄の一部を投資にまわし、自動的に投資、運用されるようにする。この資産形成にとってとても大切なことを本書では解説しています。
意識的に貯蓄をすることは、私たちにとってはなかなか困難なことだったりします。なぜなら貯めるよりも消費する方のが、私たちにとっては簡単だからです。
だからこそ、意識せずともお金が貯まっていく『システム化』という視点はとても大切になってきます。よく先取り貯蓄なんて話もありますが、それも貯蓄のシステム化の一つです。
むしろ、貯蓄をする方法のほとんどが、家計のシステム化なのかもしれません。貯蓄のできている人の多くは、節約が上手いとか、お金がかからないといったことよりも、『貯蓄をシステム化』することでお金を貯めていることの方が多いのかもしれません。
そのほか、お金を使うポイントやリッチということをどう考えるのかといった内容が本書では書かれています。少し著者の考え方が強く出ているので、読む人にとっては、受け入れられない話もあるかもしれません。
しかし、それでもリッチな生活に向けて、参考になるポイントがいくつか含まれている本だと思います。