投資家なら誰もが知りたいバフェットの投資のノウハウ。

50年超の長きにわたって、優秀な投資家であり続けたウォーレン・バフェット。

効率的市場仮説の信奉者や経済学者などの有識者の中には、そのウォーレン・バフェットの成績は、能力ではなく偶然の産物だという人もいます。しかし、これほどの長きにわたってその偶然が続いたと考えるのは、ちょっと強引な話のように聞こえなくもありません。

「きっとバフェットは、私たち一般の投資家にはない何かがある。」「バフェットの投資法を学べば、市場平均を超えることもできるのではないか?」

と考えてしまうのも当然のことだと思います。

バフェットの運用成績は、年率20%を超えていると言われています。株式投資の市場平均リターンの利率が年約10%だと言われていますから、平均値の倍の速度で資産を増やしてきたということになります。

投資のプロには、市場平均の成績でさえ高い壁だなどと言われることもありますが、それをはるかに凌駕しています。バフェットの年率20%という数字は、資産額が3年で約2倍、6年で約4倍、9年で約8倍、12年で約16倍になってきたということを意味します。素晴らしいパフォーマンスです。

そんなバフェットにあやかりたいと考える人は、世界中にたくさんいます。そのため、バフェットに関する書籍は、本当にたくさん出版されています。本書はそんなバフェットについて書かれた本の一つになります。

バフェットのことを勘違いしていたと気づかされた?

ウォーレン・バフェットの投資法といえば、本質的価値よりも安く買い、いつまでも長期で保有しつづけるという、『バリュー投資』と『長期投資』の投資スタイルで説明されることが多いです。

そして、バフェットがどのように本質的価値を見積もり、どんな銘柄を買っているのか。長期保有するにあたり、どんなタイミングで買っているのか。そんな具体的なバフェットの投資のノウハウを学ぼうとたくさんのバフェット関連の投資書籍が出版されています。

ところが、バフェットの投資について考える際に最も大切なことは、バリューとか長期とかそんなレベルの話ではなかった。

そのことをこの本で気づくことになりました。

本当は、心の奥底ではなんとなく気づいていたことなのかもしれない。でも、バリューとか長期保有とか表面的な物事にとらわれて、そこに意識がむいていなかっただけなのかもしれない。

本書のタイトルでもある『マネーマインド』。バフェットの持つマネーマインドこそが、本当に学ぶべきバフェットの投資哲学なのだと思いました。

バフェットの昔の言葉などを引き合いに出して、バフェットの投資法を説明している書籍や人はたくさんいます。しかし、バフェットにあるのは、特定の個別具体的な投資手法などではなく、一言で言えば『マネーマインド』だけだったのかもしれない。バフェットの具体的な投資法の話しというのは、大して意味のない話なのかもしれません。

バフェットの具体的な投資法が意味がないと考える理由は、バフェットの投資法は、今までそして今でも、常に進化を続けているからです。

バフェットの投資法は、90歳を超えた今でも、その進化は続いています。

バフェット流投資の最も素晴らしいところは、その『進化する』というところにあったのかもしれないと、この本を読んで、改めて感じた次第です。

バフェットの投資法を学んでも、私たちの役には立たない。

結局、本書を読んで改めて気づかされたことは、バフェットの具体的な投資法を学ぼうとしても、結局役に立つことはないという事でした。

バフェットの投資法は、常に進化しているので、昔のバフェットの投資手法や投資銘柄、昔いってた言葉、そういうものを並べてみたって、結局今のバフェットはすでに違う次元にいる。

株式市場などのマーケットや経済というのは、経済学や金融工学などで今流行っている、物理学似の計算をしてもわかるようなものではなく、生物や生物の進化のように、その時その時の状況や環境に合わせて、表情を変え、進化し、新しいものに置き換わっていくという特徴があると思っています。

たとえば、バフェットが昔使っていた投資手法でもある、バフェットの師匠であったベンジャミン・グレアムのバリュー投資法は、すでに通用しなくなって結構経っています。

また、大手企業と呼ばれるメンバーたちも、工場や機械などの大きな資本を必要する企業から、物も人も少なくて大丈夫な小さな資本でお金を稼ぐ企業が、経済界のトップメンバーにたくさん出てくるようになっていて、企業の在り方も変化しています。

経済やマーケットというのは、環境が変化することにより、同じ投資手法や投資へのアプローチでは、突然まったく通用しなくなることがある。だから、投資家として長年にわたり一流であり続けるという事は、とても難しいことなのです。

そして、そんな中で実際に常に一流であり続けている人がウォーレン・バフェットです。

バフェットは、投資手法や投資のアプローチを時代と共に変化させてきた。しかも、その変化は、その時代その時代にとても良く適合してきた。まさに時代と共に進化してきたと言えます。

この進化するということが、バフェットの最大の強みだと、この本で改めて感じたわけです。

そしてまた、私たちがバフェットの投資法を真似しようとしても、結局は無理だという事にも気づかされました。もし仮に、今のバフェットの投資法を私たちが完全にマスターしたとしても、マーケットの変化とともにバフェットはまた違うところに行ってしまう。

常に変化し、進化し続ける人を追いかけても、追いついたと思った時には、すでにもう時代遅れになっている。

結局、投資で大切なことは『自分で考える』ということしかないということに気づかされます。自分で学び考え、行動を変化させる、それができなければバフェットのように時代と共に進化していくことはできないのかもしれない。

最終的に必要なものは、本書のタイトルでもある『マネーマインド』。どんなに経済やマーケットが変化していこうとも、決して変わらない原理原則。

いつの時代でも変わらない原理原則である、正しい『マネーマインド』をもつことで、正しく世界を認識し、うまくその時代その時代に適合させていくことができるということなのかもしれない。

投資の本としては、ここ最近では珍しいぐらい読んでよかったと思える本でした。