ボリンジャーバンドを誤解していた?
価格の値動きから将来の株価を予測しようというテクニカル分析。そのテクニカル分析の中の一つにボリンジャーバンドとよばれるものがあります。
証券会社などのテクニカルチャートを見ると、かならずと言っていいほど、このボリンジャーバンドで分析ができるようになっていたりします。
チャートにボリンジャーバンドを適用すると、価格帯のようなものが表示され、予測できる高値と安値が確認できるグラフが出てきます。ボリンジャーバンドでは、正規分布で計算された標準偏差によって、確率的に約95%(2σの場合)の価格帯を表示しています。
つまり、ボリンジャーバンドの上の線まで株価が上昇した時には、「もうこれ以上上昇することはないだろう」と考えて『売り』を建てる。逆に、バンドの下の方に株価がいる場合には、「これ以上下がることはもうないだろう」と考えて『買い』を建てる。
ボリンジャーバンドの使い方は、確率を利用して、「上がれば売って、下がれば買う」という、逆張り的な利用をイメージすることが多いように思います。
ですが、それは全くの誤解だったようです。ボリンジャーバンドの使い方は、それとはまったく反対の考え方だったようです。
ボリンジャーバンドは、逆張り的に使うのではなく、「ボリンジャーバンドの上の線に株価が接したら『買い』、逆に下の線に株価が接したら『売る』」という順張り的な使い方を想定しているのだそうです。
ボリンジャーバンドの本当の意味?
ボリンジャーバンドの線は、正規分布の考え方をもとにして作られています。
正規分布とは、平均値を中心に左右に山のようになっているグラフで、人の身長や世帯年収の分布、雨粒の大きさなどいろんなところで統計としてよく使われています。
そして、金融の世界でもこの正規分布を使って、株式など金融資産のリスクとリターンを分析していることがあります。有名なところでは、ノーベル賞を受賞した金融理論と言われている『現代ポートフォリオ理論』こそがまさに正規分布の考え方が基になっています。
最近だとこのポートフォリオ理論は様々な金融商品で使われるようになり、投資信託やロボアドバイザー、ファンドラップといったサービスで使われていることがあり、かなり一般的に利用される投資理論になっています。
ボリンジャーバンドは、そんな正規分布の考え方をテクニカル分析に応用したものであるはずなのに、実際にボリンジャーバンドを使う際には、その逆の視点での利用をイメージしています。ボリンジャーバンドを考えたジョン・ボリンジャーは、ポートフォリオ理論派とは違って、『金融の世界は正規分布になっていない』という考え方を持っているようです。
これは意外な展開でした。ジョン・ボリンジャーの株式市場に対する考え方は、「株式市場などのマーケットは、正規分布にはなっておらず、むしろこの正規分布を外れたときこそが、重要だ」と考えているという話でした。
つまり、ボリンジャーバンドの目的は、「正規分布で計算できる範囲内を外れた時にこそ、行動するチャンスが生まれる」と考え、正規分布での価格帯を調べているというわけです。
正規分布で計算できる範囲を超えた時こそが、マーケットにトレンドが生まれる起点になるというのです。
金融のマーケットは、正規分布には従わないという話は、すでに何冊もの本で学んでいたし、実際に自分で投資をしてる中でも、正規分布に従うという話よりも、正規分布には従わないという説明の方のが、腑に落ちる感覚を持っています。そのため、ボリンジャーの考え方にも、なるほどと思いました。
ボリンジャーバンドが有効なのかどうかは、まだ使ってみないとわからないことですが、テクニカル分析の世界でも、金融マーケットを正規分布では見ていないということが分かったことに、なんか勝手に納得してしまいました。