実にファイナンシャルプランナーらしい内容の本。

本書の印象を一言でいえば、「いかにもファイナンシャルプランナーらしい内容の本」。

ファイナンシャルプランナーが書く本には、「もっともらしい知識がいろいろと披露されてはいるけれど、本を書いているファイナンシャルプランナー自身にその内容に対しての実体験がないためか、なんとなく現実感がない。」といった印象を持つことが多いです。

本書を読んで感じるところは、まさにそんなところでした。だから、この本はファイナンシャルプランナーが書いた本らしい本という印象を持ちました。

日本版FIREと言うのなら、本当に日本でFIREを達成した人をモデルにして書いてもらいたいところです。もしくは、説明しているファイナンシャルプランナー自身が実際にFIREを達成しているか、またはFIRE達成者を何人も支援してきたファイナンシャルプランナーが書いた本であるほうが、よほど現実感があるものです。

FIREを目指さなくても、FIREを考えることで、ファイナンシャル・プランニングの総合問題になる。

はっきり言って、「本気でFIREを目指す」という場合には、本書が果たす役割はあまりないかもしれません。

しかし、読み方を変えれば良い教材にもなります。

別にFIREを目指さなくても、生涯のファイナンシャル・プランニングについて考えるときに、FIREすることを考えてみるというのは、一つのいい題材となると思いました。

なぜなら、FIREをするためには、これから先生きていくための『一生涯で必要になるお金』について考えることにほかならないからです。

まず、これから手にする可能性のある収入について考える。そして、お金の賢い使い分け、支出の用途、節約や生活の仕方、人生設計。特に、住宅や教育など人生の中で大きな割合を占めるコストについてどう考えるか。

生命保険などの万が一にかかるコストの考え方や、年金や医療、社会保障のことなど、まさに、ファイナンシャルプランナーが勉強していることすべてが網羅されています。

さらに言えば、その網羅された内容を別々に考えるのではなく、一人の人生として考えることで、ファイナンシャルプランナーが学ぶ知識の総合問題になります。

そのようにしてこの本を読むと、FIREを抜きにして面白いと思えるところが出てくるかもしれません。