学力の間違った思い込み?

「ゲームは悪影響?」、「成績を上げた時のご褒美は必要か?」、「ほめて伸ばすは本当か?」、「塾や習い事は、いつから始めれば?」

などなど、子供の学力をアップさせたいと考えている人はたくさんいます。

この本は、そんな人たちの子供の教育について抱いている疑問に対して、『経済学』という視点から子供の教育のことを考えています。

「経済学というフィルターを通して考えた、学力アップのために本当に必要な事とは?」

本書でいうところの経済学的な視点というのは、統計データや実験の結果などから考えることを言っています。

統計データや実験の結果など根拠をしめすエビデンスがあるというのは、ある意味信頼性のある話であると言う事もできます。

そしてそこには、私たちが思い込みによって勘違いしているところも、いろいろ見られるようです。

今の日本の教育政策は間違っている?

本書で詳しく説明されていますが、今の日本の教育についての話のほとんどは、一人一人の『経験則』によるものがほとんどで、根拠に乏しいものが多いのだそうです。

とくに、筆者が言うのには、政府や教育委員会などの公的機関の考えたものには、なんのエビデンスもないものが多く、そのほとんどが間違いであることもあるそうです。

おそらく、この本を手に取る人の多くが、「自分の子供にどのような教育を与えるといいのだろうか?」と思って、手にすることの方が多いのではないかと思うのですが、本書の本当の目的は、それよりも『今の公的な教育の在り方へ疑問を投げかけること』にあるのかもしれません。

この本を手にした理由が、自分の子供の教育についてのヒントを得たいという理由の場合には、本書の最初から半分ぐらいを読むだけでも十分だと思われます。

後半になってくると、評論家的な政策批判の様相が強くなっていきます。

正直な個人的感想としては、著者の意見に少し受け入れがたい印象さえ持ってしまいました。さらに言うなら、本書で使っているエビデンスにも、若干違和感を感じるところも多々ありました。

エビデンスといっても、所詮は統計的データで因果関係ははっきりしていません。特に『平均値』をもとに話を展開しているだけなので、本書を信じて教育をしたとしても、みんながみんな同じ結果になるわけではないと思われます。

平均値からの分散も考慮しないと、統計データだけを持って物事を判断するのは危険だと思います。

また、統計データでそうなっていたという説明だけでは、「そういう事もあるかもね?」という事しかわからず、とても曖昧なもので終わってしまいます。

実は、『経済学』には、この本に限らず、同じように統計だけで物事を考えて、因果関係を適当に説明し、曖昧なまま、その曖昧な答えを真実だとして取り扱う傾向があるようです。

とはいえ、傾向を掴むだけなら、『平均値』を見ることが参考になることは確かです。

つまりは、この本の話は、「具体的に何をする」というよりも、『傾向を掴む』という事に意味があるのだと思います。