間違った思い込みをしながら生きている私たち。

著者ロルフ・ドベリによる前回の著書『Think clearly』では、「偶然という世界で私たちは生きている。」という事について考えさせられました。そして、「この世界に対しての見方」にも影響を与えてくれました。

今回の『Think Smart』では、私たちが『思い込み』や『間違ったものの見方』をしていることで損していることを考えさせてくれます。

前回に引き続き、素晴らしい内容だと感じました。

私たちは、この世の中を驚くほどに間違った思い込みを持って見ています。その間違った思い込みを本書では教えてくれています。本書の中で登場するすべての話に、思い当たる節があることでしょう。また、読むたびに今までの自分の考え方や捉え方、行動などを考えさせられます。

本書の最初に登場するアリストテレスの話で、『賢人が目指すべきは、幸福を手に入れることではなく、不幸を避けることだ。』とあります。

本書を読むことで、この言葉の意味が深く心に沁み込んでくることと思います。

私たちは、間違った思い込みによって、失敗したり、損したりすることが多いので、『不幸を避ける』ためには、間違った思い込みを正さなければなりません。しかし、間違った思い込みを正すといっても、それが簡単な事ではありません。なぜなら、その間違った思い込みは、私たちの遺伝子レベルに組み込まれているところも多々あるからです。

間違った思い込みや考え方は、直すことはできないものなのかもしれません。でも本書を読んだりすることで、気づくことは出来ます。

間違った思い込みでやってしまったことを、気づかずにそのままにするか、気づいてすぐ訂正できるか。その差は、かなり大きいのかもしれません。

計画を立てると安心する?

本書の中の一節で、計画を立てると安心するという話がありました。

ファイナンシャルプランナーという仕事をしていると、ライフプラン表やキャッシュフロー表などのお金の計画書の話が出てくることがあります。あくまで個人的な意見ですが、FPがつくるキャッシュフロー表などの資料を作るのに、数万円も支払うような価値が本当にあるのだろうかと思っていました。

これらの資料は、作った時は満足するのかもしれないけれど、ほとんどの人が、その後その資料を見返して計画を実行したという事はあまりないようです。

そもそも、この世界は不確定要素が多く、1年先の計画でさえ思い通りに進まないことが良くあります。もっと言うなら、FPに作ってもらったライフプラン表やキャッシュフロー表通りの人生を歩んでいるなんて人の方が稀だと思っています。

FPの作る計画書というのは、作った時が旬で、将来に対してはほとんど使いものにならない。将来に向けて作ったはずなのに、変な話です。

だからこそ、FPが細かなことまで設定してライフプラン表やキャッシュフロー表を作ることに、お金と労力をかけることに意味はないのではないかと思っていました。

でも、それは『間違った思い込み』だったのかもしれません。なぜなら、『計画を作ることで安心する』という効果もあるからです。これを『ゼイガルニク効果』と言います。

ただし、『ゼイガルニク効果』を求めて計画書を作るなら、「ある程度具体的に、明確に、問題点を把握すること」ができれば十分なのかもしれません。つまりは細かく細かく現状を調べ上げ、細かな目標を設定し、緻密な計画を立てるといった面倒なことまでは必要ないのかもしれません。

ある程度、ざっくりと、「なるほど、そんな感じか」ぐらいの、大まかな内容で十分ということなのでしょう。

『間違った思い込み』というのは、私たちの周りには沢山、それこそ本当に沢山あります。しかも、私たちの気づいていないところで、それは起こっている。

当たり前だと思っていること、常識だと思っていること。でもその『本質』は何なのか。

この本、『Think Smart』では、そういう大切なことを教えてくれています。