金融の歴史を学ぶのに良い本です。

この『バブルの物語』は、著名投資家のハワード・マークスがおすすめしている一冊だと言われています。ハワード・マークスは、世界一の投資家と言われてるウォーレン・バフェットが一目置いている投資家としても有名です。

ハワード・マークスの投資の考え方については、マークスの著書である『投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識』が参考になります。この本は、投資を学ぶ者にとってのおすすめの一冊として取り上げられることも多い本です。

『バブルの物語』は、1991年に初刊がでました。つまり、もうかれこれ30年ぐらい前の本なのですが、いまだにこうして新版として売られることがあるぐらい本です。当然読めばそれだけの価値がある本だと感じさせてくれる本でもあります。

本書が新版となった過去のタイミングを見ると、2008年12月と2020年3月とありました。まるでバブル崩壊に合わせて、この『バブルの物語』が新刊として発売されているのかなと思うタイミングです。

もしかするとバブル感が出てくると、『バブルの物語』を読んでみようと思う人が増えるのかもしれません。

たとえば、2008年と言えば、リーマンショックがありました。そして、2020年3月は、新型コロナ感染症の拡大により金融市場が大きく荒れた時期でした。

『バブルの物語』は、バブルが起こったのは何故かとか、バブルをどう乗り切るのかなどといった、学者気取りの重ったるい感じはなく、本書の中でもエッセイだと説明しているように、過去のバブルを追体験させてくれるような話の本です。

本書を読んで良かったことは、バブルはこうして起こったとか誰が悪かったとか悪者探しの話ではなく、ただ単純に当時のバブルの様子を感じさせてくれるという感じになっていることです。

何が良くて何が悪いという話よりも、こういった淡々とした話の流れの方が、案外とても大切なことなのかもしれないと感じました。

世界恐慌前のバブルの様子が引っかかる?

本書で出てくるバブルのエピソードの中で、一番引っかかったのが、1929年の大暴落です。

この1929年の大暴落は、世界恐慌を引き起こすきっかけとなった金融崩壊と言われていますが、なぜこのエピソードが気になったのかと言うと、今の状況が、この1929年ごろと似ているのではないかと感じたからです。

例えば、1929年の金融崩壊のきっかけに、2つの台風という経済に大打撃を与える大きな自然災害があったとありましたが、それが今のコロナ感染症の拡大を連想させます。またその後に、慎重派の連邦準備制度の規制に対抗して、貸出を拡大させたナショナル・シティ銀行という存在があったという話。

コロナという自然災害を期に、FRBや世界の中央銀行が大規模に金融緩和を行った話と似ていると感じました。

1929年では、経済を失速させるほどの大規模な自然災害などまるで関係がないように、その後も上昇を続けていく株価に対して、「株価は現実に別れを告げた」といった文言は、昔の話をしているとは思えないほどの既視感を覚えます。

株式に投資をしている者にとって、この話には、背筋がゾクッとする話です。それほどまでに、この1929年の話は、印象深い内容でした。

これから先、金融市場がどうなるのかは、わかりません。それでもこの本で1929年を追体験してみることは、決して無駄ではないと思いました。

悪い状況に対応できるようになるためには、その悪い状況を一度体験してみるということが役に立つことが多いものです。本書を通して、世界恐慌を疑似体験することは、将来役に立つこともあるかもしれません。