この本は、バフェットとマンガーの株主総会のメモです。
この本は、良くも悪くもバフェットとマンガーが株主総会で語ったことのメモです。
良くも悪くもというのは、要約をまとめているというメリットはありますが、メモという形式は、筆者の思いが反映されやすいというデメリットもあるようです。
つまりは、バフェットやマンガー自身の言葉なのか、その言葉を受け取った筆者の解釈なのかが、非常にあいまいに感じられたということです。
バフェットもマンガーも、彼らに関する本はいろいろ出ていますが、実は自身で書いた本というのはありません。
彼ら自身が書いた本がないために、株主総会の話やバフェットが書いている株主への手紙などを参考にして、彼らの投資を学ぶためのツールとして使われています。
本書は、株主総会でのバフェットとマンガーの言葉をつかって、バフェットとマンガーの投資などに関しての彼らの考え方などを知るのに一役買おうと思ってたのだと思われます。
しかし残念ながら、結局のところ筆者の思いや解釈によって、情報を取捨選択されているという感じが否めませんでした。
さらに本書の残念に感じたところとしては、情報がまとまってなくて読みづらいという印象があったこともあげられます。
バフェットが語った時代の歴史や時代背景などがわかっていれば、何を言わんとしているのかをより理解できるのかもしれませんが、そこまでの知識がない人にとっては、ただ読みづらいだけという印象でした。
バフェットは今の金融理論には否定的?
本書の中で一点気になる記述がありました。それは、バフェットが、MPT(現代ポートフォリオ理論)に否定的な事を言っているという話です。
現代ポートフォリオ理論は、ノーベル賞を取った理論だといわれ、今様々な金融商品で利用されている金融理論です。さらに、ファイナンシャルプランナーや投資のアドバイザーなど多くの資産運用の専門家といわれる人達が、顧客などに向けた資産運用の説明として使っている、今や市民権を得たとも言える理論でもあります。
つまりMPTは、今の金融や資産運用の業界では、常識ともいえる投資の考え方なのですが、どうやら投資の神様とも言われている偉大な投資家ウォーレン・バフェットにとっては、そのMPTは疑問に思う対象だったという事でした。
実は、私自身もこのMPTには、若干の違和感を感じています。そのため、バフェットがMPTに否定的だという話は、とても印象的でした。
「投資はシンプルに考えれば良い、複雑に考えすぎ。」
「そして、いい金槌をもったつもりになると、人はその金槌を使わずにはいられなくなる。」
まったくもってその通りだと感じる話です。
ボラティリティとか、相関とか、難しい言葉を使いながら、尚且つ複雑な計算をして投資をする必要は全くないのだと思います。バフェットの話の中でも、「良い投資は、計算なんかしなくても、すぐに良い投資だとわかるぐらいが良い」という言葉をどこかで聞いたことがある気がします。
しかも、私たちは、それが本当に良いものなかなどうかを抜きにして、良さそうだという思惑だけで、使ってみたくなるという性も持ち合わせています。
MPTという、なんかかっこいい響き。ノーベル賞という権威ある賞と関連があるらしい。いかにもプロっぽい専門家が良いものだと説明している。
これだけで、なんとなく、良いものだと思って使ってみたくなる。これって、本当に正しい判断の仕方なのだろうか?
結局投資と言うのは、理論といいよりも、哲学なんだなと考えさせられます。