投資の心理学。
短期で売買するトレーダーに限らず、長期間保有を続ける長期投資家であっても、投資をしている人ならば必ずぶち当たる問題があります。
それは、心の問題です。
投資で必要とされるノウハウは、技術や情報、知識、統計、分析力といった理性的なものだと思ったら大間違い。投資のパフォーマンスに影響をあたえる私たちの心の問題は、とてつもなく大きいものです。
中でも、『リスク』を感じる心理的な作用は、投資をするにあたって、特に大きな問題となります。
この本の中で、何度もでてくる話に、「損失はできるだけ小さくし、利益はできるかぎり伸ばす」という話があります。損切は早く利食いは遅く、短期売買などを行うトレーダーならば、誰もが聞いたことがある格言です。
しかし、格言と言われる程の大切な言葉なのに、実践するのはとても難しい。いざやろうと思っても、なかなかできない。
その理由が、私たちの心の中の問題というわけです。
投資をする時に知っておきたい、私たちの心の中で起きている悪い反応。それが本書の目的です。
心の問題と対峙するために。
残念ながら、私たちは、この心の問題を完全に解決することはできません。
無心にコンピューターのように冷静に取引することが出来れば、心の問題なんて関係なくなるのかもしれませんが、私たち人間には不可能なことです。
そもそもリスクとは、不確実性のことを指すわけですから、要は『わからない』ということだと思います。そして『わからない』ことなのであれば、それに対して不安を感じてしまうのは、当然と言えば当然です。
いくら知識武装しても、心理学を勉強して投資に対する心の悪影響がわかっていたとしても、不安を感じる心は決して消すことは出来ません。本書でも、心理学を駆使して、機械のようになれるとは言っていません。
機械ではない、心の強みを活かす。
本書では、人にできない事を機械ができるように、機械にできないことが人にはできる、と言っています。不安や恐怖を感じながら、どうやって投資と対峙したらいいのか。それがこの本の課題というわけです。
重要なのは、心との対話だと言っています。
「取引をしている自分が、その時どう感じているのか、心地よいと感じるポジションサイズはどのくらいなのか?」それを知ることが大切です。
それを客観的に見れるようにするために、日記などで記録をつけることを本書ではお勧めしています。
面白かったのは、不安に感じたらストップウォッチで、不安に感じている時間を測って記録してみるという話もありました。
リスクを感じると出てくる、不安や恐怖。それに自分の心はどんな反応をしているのか。日記をつけたり、ストップウォッチで計測してみたりして、客観的に見つめてみようと提案しています。
ポジションの取りすぎ。損をしたくないための、早めの利食い。なかなかできない損切。上手くいくと横柄になる。負けると取り返したくなって、いつもと違うリスクを取ってしまう。
などなど、投資をしていると感じる、様々な非合理的な反応と判断。
はっきり言ってしまえば、これらのことを知らないまま投資をつづけていると、いつかどこかで必ずと言っていいほど失敗することになるのが落ちです。
投資と心の大切な問題。これは間違いなく知っておくべき話だと思っています。