賢い一人の人よりも、多様な大勢の意見の方が正しい?
有名な企業経営者、政治家、歴史上の人物、私たちは一部の賢いものだけが、正しい選択を導けると思っている節があります。
しかし、実は違うのかもしれない。
それがこの本の目的、『みんなの意見は案外正しい』です。
株式投資などへ投資をしている人の間では、『効率的市場仮説』という有名な言葉があります。
これは、多様な人が大勢集まっている、株式市場などのマーケットでは、すべての情報が瞬時に、かつ効率的に反映され、マーケットは、その時点で正しい価格になるようにできているという考え方です。
そして、その効率性の程度に合わせて、強度、準強度、弱度といった表現でその効率性の度合いを分けて考えられています。
つまりは、『みんなの意見は案外正しい』という考え方は、不思議な話でもなんでもなく、私たちの世界では、すでに利用されている考え方というわけです。
特に、経済の世界では、この考え方はよく受け入れられているようです。
ただ、『みんなの意見は案外正しい』が有効にその力を発揮するためには、一定の条件がクリアされていることが必要なようです。
株式市場は、ほんとうに効率的なのか?
効率的市場仮説というのは、あくまで『仮説』です。
つまりは、実証されているわけではありません。
しかし、多くの有識者たちが、投資や資産運用において、この効率的市場仮説をとても重要視しているように感じます。
確かに、株式市場が『みんなの意見は案外正しい』が力を発揮するための条件が整っている場所なのであれば、その通りなのかもしれない。
でも、実はそうではなかった。
この本の説明によると、そう解釈されます。
一人の賢い人の意見を超える、正しい『みんなの意見』が出るためには、『多様な』という条件が必要だとあります。
つまり、株式市場に『多様な』意見が使われるようにできているのかが問題なのです。
しかし、株式市場というのは、著名投資家や有名なアナリストといった一部の人の意見に引っ張られることがあったり、はたまた、みんなが一斉に「まだまだ上がる」などと同じ方向に考えるようになったりと、多様な意見が入っているとは言えない時期もあったりします。
つまりは、株式市場というのは、「みんなの意見は案外正しい」が十分に機能していない可能性があり、『瞬時に情報を価格に反映させる』という効率性は高いが、『常に正しい価格になっている』という効率性には疑問が残るという事が、本書を読むとわかってきます。
つまり、株式市場にはバブルとその崩壊は存在するというわけです。
この本は、『「みんなの意見」は案外正しい』という話への知的好奇心に限らず、マーケットへの理解を深める意味でも、とても面白く読めた本でした。