生涯現役を目指すトレーダー

まず、本の内容云々よりも、87歳で18億の資産を築いて、それを現役として運用しているトレーダーがいるという事に感心します。

「87歳になって18億円もの資産、一体どうするつもりなんだ?」と思う人もいるかもしれません。

ですが、この本の著者藤本さんは、そんな次元では物事を考えていません。そもそも藤本さんは、お金そのものに興味がないのかもしれません。よくある大金持ちのイメージのような、豪華できらびやかな生活とはまったく違う、一般的で質素な生活を送っているようです。

株が好き

藤本さんが、今でも現役トレーダーとしてお金を稼いでいる理由は、単純に「株が好き」という気持ちだけのようです。

まるでメジャーリーガーの大谷翔平が、どんな大金を手に入れても、いつまでも野球への意欲が失われることがないのと同じように、藤本さんも、お金云々ではなく、ただただ株が好きという気持ちで、毎日を送っているようです。

なんというか、「人は年を取るとともに、何かをやろうという意欲が失われていく」ということがよく言われていますが、藤本さんは、いつまでたっても意欲が失われることがない。

本人も言うように、生涯現役のトレーダーでありたいという気持ち。

その哲学と人間性に、ただただ単純にすごいことだと思わされます。

生涯学習としての、株式投資のすすめ

あたりまえですが、株式投資に定年はありません。判断力さえ衰えなければ、死ぬまで続けることが出来る、お金を稼ぐ手段にもなります。

会社を辞めた後も、株式投資を通じて、社会とのかかわりやつながりを感じることもあります。

株式投資に本気で取り組んでみると、社会や経済そして世界のことをいろいろ知ることがあります。株式投資をしていない世界の見え方と、株式投資をして見えてくる世界、これは全く違う世界だと思っています。

藤本さん曰く、「ボケてる暇あらへんで」となるぐらい、世界は日々変化しています。

その変化を感じとり、未来を想像し、とにかくいろんなことを考える、株式投資は知的なゲームだと言われることもありますが、それ以上に、未来に対しての『期待感』を持つことが出来る、興味と感心と好奇心をくすぐられるものです。

そもそも投資とは、「未来がもっと良くなる」という期待値に投資をするですから、前向きな気持ちがなければやるべきものではないと思っています。

株式投資をする人というのは、基本的に前向きな気持ちを持っている人が多いのではないかと思っています。そして楽観的なところもある。

だからこそ、株式投資に取り組む人には、生涯現役、そしていつまでも意欲が衰えない、といった傾向があり、また株式投資に取り組むことで、そういう気持ちにさせられるという事もあるのではないかと思っています。

株式投資は、楽しむことが大切

老後は、あまりリスクを取らないようにする。安全な債券重視の投資にシフトしていく。といったことが、資産運用のアドバイスとしてよく言われています。

でも、藤本さんはそうではなく、87歳になっても、信用取引などなかりリスクの高い投資を楽しんでいる。

私も、「株式投資はそうあるべきだ」と思っている節があります。ファイナンシャルアドバイザーがするアドバイスとしては問題なのかもしれませんが、株式投資には老後も楽しめる娯楽としての効果があると思っています。

老後はリスクを抑えながら運用するというマネー至上主義の堅実で理論的なファイナンシャルプランニングもいいけれど、ある程度自由になるお金が残った老後だからこそ、リスクを取って株式投資を楽しんだっていいんじゃないかと思っています。

予想が当たったり、外れたり。想像以上に儲かったり。期待していた銘柄が活躍したり。たまにギャンブルだと言われても、ギャンブルならではの興奮も味わえるのが、株式投資です。

特に、いろんなことに意欲が失われがちになる老後にとっては、この興奮する感覚はとても楽しい時間になるのではないかと思うのです。それこそ死ぬまで楽しめる娯楽の一つになるのではないかと思っています。

ちなみに、私が本気でそう考えるようになったのは、外山 滋比古さんの書いた『お金の整理学』という本を読んだことがきっかけでした。

トレーダーではないけれど。

私自身の投資スタイルは、藤本さんのような短期売買のトレーダータイプではないので、本書の内容としては、それほど参考になる部分は少なかったのかもしれません。

本書の内容の多くは、短期売買スタイルの投資の仕方や考え方、参考になる指標やテクニカル分析といったものがほとんどでした。

私個人としては、藤本さんの投資の考え方や哲学観などが知りたいなと思って本書を手に取ったので、思ったような内容とは若干違いましたが、それでも得るものはあったように感じています。

たとえば、株式投資はリスクを取ることだという事やリスクに対する考え方などは、やはり70年近く株式投資をしているだけのことあって勉強になります。

それに、証券会社の意見や評論家やコメンテーターたちの意見は、まともに聴かないというのも面白かったです。経験を積むとやはりそういう気持ちが出てくるものなんだなと感じました。

藤本さんのトレードスタイル?

藤本さんの株式投資のスタイルは、短期売買が主体なので、長期間保有するという事はほどんどないようです。

実際本書の中でも、藤本さんの保有銘柄として銘柄一覧が載っていたりしますが、本人曰くいつ手放しているかわからないから、参考にならないようなことを言っていました。

今日買って今日中に売る。3円とか5円の値上がりで売る。といったこともよくあるようで、デイトレーダーに近いのかもしれません。

しかし、デイトレーダーのように短期で売買するスタイルではあるけれど、基本的には、将来成長すると見込んだ銘柄でトレードをしているというところが面白かったです。

短期売買なら将来性よりも、今チャートで勢いがあるかどうかの方が重要かと思っていましたが、そうではない考え方もあるんだと思いました。

藤本さんのトレードのスタイルは、長期的に成長が見込める銘柄で短期売買することで、もし思惑が外れ、買った後に価格が下落することになっても、そのまま持ち続けていればいつか上がるだろうという放置ができるという点が面白いと思いました。実際に藤本さんの保有銘柄には、塩漬けとなっているものもあるという事でした。

本書を読んだことで、私自身が藤本さんの投資の方法を取り入れるところはあまりないとは思っていますが、それでも面白いと思うところはあったし、何より藤本さんの株式投資への意欲と、元気をもらったような感覚になれた本でした。