天才投資家でも間違える?
「天才なのに間違えるの?」、「失敗したら、天才とは言えない?」、でも相場とは、そういう所ではないようです。
相場という世界は、必ず失敗をするところで、天才とはその失敗と上手に付き合う事が出来る人のことを言うのかもしれません。
『相場の世界にいれば、失敗することからは逃れられない』。天才投資家とそうでない投資家の差は、この失敗をいかにコントロールできるかにあるのでしょう。
投資でうまくいっている人というのは、常に自分の投資や判断が失敗することを想定しながら行動しているようです。言ってみれば、偉大な投資家ほど、『不確実』なこの世界を、うまく認識しているのかもしれません。
この本では、そんな偉大な投資家たちがしてきた『失敗』にスポットライトを当てています。
この本は、偉大な投資家たちがしてきた失敗から、何かを学ぼうというのが目的ではなく、偉大な投資家だって失敗してきていること、そして『投資をするという事は、かならず失敗がつきまとう』ということを教えようとしているようです。
このちょっとした言い回しの違いが、とても大きな意味を持っています。
『投資をしていると、必ず失敗する局面がある。』、そのことをつねに念頭に置いて行動しているかどうか、そこが長期的に投資で資産を築けるかどうかの大きな違いになっているのかもしれません。
なぜ投資では、必ず失敗する局面がくるのか?
「投資をしていて、失敗をする局面とはなにか?」といえば、ズバリ『損した時』です。
投資をすることは、リスクをとることというのは誰でもしっています。しかし、「リスクってなに?」と問われると、明確に回答できる人はほとんどいないと思います。
リスクを説明するときに、「この投資商品は、リスクがありますが、長期投資をすれば、だいたい年率7~8%のリターンが期待できます。」といった話をされることがあります。
理屈としては真っ当な話のような気もしますが、現実的には「はてな?」と思う話でもあります。
このリスクの話の問題点は、この商品に投資をすれば、結果的に損することはない、と言ってしまっている点です。
この投資商品を購入する人が考えるリスクは、「損をするかどうか」だと思うのですが、いかにも損しないというような説明になってしまい、つまりはリスクがあると言いながら、リスクがないと思わせてしまっています。
投資というのは、果たして本当にそういうものなのだろうか?
現実的な問題としてそこを考えると、「なんか落とし穴がありそうだ」と考えるのが当然です。
そして投資と言う世界には、現実にその落とし穴が存在する。だからこそ、自分が判断をミスした時のことを考えながら投資をする事が大切になります。
たとえば、『短期的にはリスクがあるが、投資して20年後に元本を割ったことは、過去に3%程度しかない』という説明を聞いてどう思いますか?
過去の統計では3%だったとしても、自分がこの3%に入らないとは限りません。確率が低くとも現実化される可能性はあるという事を認識しなければいけません。
私たちの脳には、この3%をうまく認識できない認知バイアスという仕組みがあると言われています。たとえ、確率的にはとても低いものであっても、運悪くその3%に入ってしまえば、その本人からしたら元本を割っているという事実しかありません。
この認知バイアスを持っている私たちの脳が、投資で失敗をするようにできているともいわれています。
相場は、不確実性の世界であり、また私たちの脳がその不確実性というものをうまく理解できないために、投資をしていればいつか必ず失敗することになるというわけです。
それは、私たち凡人はもちろん、天才投資家であっても同じだという事です。
天才投資家と呼ばれる人たちが失敗しても成功することができたのは、失敗することを前提に、物事を考えているからなのかもしれません。
この本の筆者自身の身近な感想も参考になります。
この本に登場する投資家たちは、はっきり言ってあまりにも偉大過ぎて、自分のことに置き換えて考えるのは難しい気もします。
自分が天才投資家たちがしていると失敗が、本質的に同じものであっても、天才たちと同じだというイメージは湧いてこない感じがするものです。
ただ、最後の章で登場する、天才投資家?マイケル・バトニック。一瞬「誰だ?」と思いましたが、この本の著者本人でした。
失礼かもしれないけれど、投資家としては大した経歴も持っていないようで、今まで投資でどの程度の成功をしているのかも怪しい感じです。
偉大な天才投資家達と比べ、失敗の規模も、比較的小さめです。まるでこの本を読んでいる私自身の話を聞いているみたいでした。
でもこれが大切な事だということに、この本を読んでいると気づきます。
失敗の規模は小さくとも、その冒してしまった失敗の本質は、私たち一般人の投資家も、偉大な投資家も同じなのかもしれないと感じさせてくれます。
この本は最後の章に、著者自らの話を加えることで、投資家と失敗の関係性についての本質的な話を、うまくまとめているようです。
何度も言うようですが、子の本の目的は、失敗談を話すことで、読者が同じ過ちを犯さないようにすることが目的ではありません。
投資をしていれば、必ず失敗を経験することになるのを認識させることが目的です。そして、一番大切なことは、その失敗をどのようにコントロールするかを考えることだと教えてくれています。