妙に説得力がある本

この本の著者小山昇は、ダスキンのフランチャイズ事業を行う事業の経営者でありながら、経営のコンサルティングを行っています。

著者は経営に関する本を多数出版していて、経営者という顔よりも、経営コンサルタントとしての顔の方が有名なのかもしれません。

小山昇のコンサルティングは、実際に会社を経営したことのない多くの経営コンサルタントとは違って、実際に現場で経営してきた経験と実績をもとにコンサルティングを行っているようです。

そのため、理論や理屈といった事よりも、実践的な内容が強く出ていて、本書の話についても妙な説得力を感じます。

できるだけお金は借りる経営?

かつて、優秀な経営方針として『無借金経営』という言葉がありました。銀行からの借入をしないで、すべて自己資金でまかなうことで会社の経営が安定するという話です。

確かに、無借金経営には、倒産しにくいというメリットがあります。会社の倒産というのは、借入の返済ができなくなった時に起こるというのが一般的な解釈です。

個人の破産の場合でも、「住宅ローンの返済ができなくなり破産した」といった、借金が原因になって破産するという話が多いと思います。

しかし、本書では、借金で倒産するのではなく、資金繰りが悪くなることで倒産するという話をしていました。銀行から借入れには、その資金繰りが良くなることにつながると言っています。

そして目指すべき財務体質は、『無借金経営』ではなく、『実質無借金経営』と言っていました。

実質無借金経営というのは、銀行からの借り入れと同じくらいの現預金を保有している状態のことを指し、いつでも借金を返せる状態で、できる限りお金を借りることで、経営の安定と企業の成長を目指すという考え方です。

確かに、成長する企業は、銀行からの借入を上手につかっている印象があります。

銀行との上手な付き合い方

本書の内容は、実質無借金経営で、企業の安定と成長を目指すために、銀行と上手に付き合うノウハウが公開されています。

本書後半では、経営計画書というコンサルティング的な話がメインになってきて、そこから小山昇のコンサルティングにつなげていくような印象も受けましたが、総体的に本書の内容には、「なるほど」と思わされるような話がたくさん出ていました。

借入は悪という印象の強いイメージの中で、逆に積極的に借入をして行こう、という意外な盲点をついた話でしたが、最初にも言った通り、本書の話には妙な説得力もあり、借入はむしろ必要なものだということに気づかされます。

現預金とは限らなくても、今すぐにでも返済できる範囲内であれば、むしろできるだけお金は借りた方のがお得なのかもしれない。

そして、そのためには銀行と上手に付き合っていくことが必要になってくる。

デジタルだなんだと言われても、結局この世の中は、信用と信頼、つまりは人と人の関係性なのかもしれませんね。