投資と投機は区別がつかない?

「投資は良くて、投機は悪い」という説明をよく見かけることがあります。

しかし最近は、この「投資」と「投機」の違いがよく分からなくなってきました。

おそらく、一般的には「投機」という分類になりそうな、『トレンドフォロー』という投資戦略。

でも、この『トレンドフォロー』という投資戦略の考え方を学べば学ぶほど、その考え方の重要性を感じないではいられません。

そもそも投資というものは、運や偶然、確率といった要素が強い行為です。

そして、この運や偶然、確率の要素に左右されることは、当たり前ですが、投機でも同じです。

というよりも、投機を理解している人の方が、より運や偶然、確率といったものを理解しているのかもしれません。

そもそも、参加している市場(たとえば株式市場)が、効率的であるのであれば、企業のファンダメンタルなどの情報をもとに投資をすることには、何の意味もなくなります。

しかし、一般的に『投資』と呼ばれているものの多くは、企業の本質的価値や経済環境などといった言葉をつかい、結局のところ情報をもとに投資を考えているケースが多いように思います。

それなのに、効率的市場仮説を重んじている傾向もみられる。

この矛盾、はっきり言ってよくわかりません。

その点では、市場を数字で考えて、確率や統計を用いて投資を考えている『トレンドフォロー』のような投資の考え方の方が、しっくりくることがあるものです。

「何をトレードしているかは、トレードをしている理由や方法ほど重要ではない」

投資は、「何を」よりも、「どうするのか」の方が重要です。

それなのに、多くの人が「何を」を気にしすぎる傾向があると思っています。

本書の著者ラリー・ハイトは、ヘッジファンドとして大成功した投資家の一人です。

投資手法は、本書の中で「非対称レバレッジ」と呼んでいる、「損する額は小さいが、儲けは大きい可能性」に賭けるという考え方からきています。

効率的と言われている市場の中から、「エッジ(優位性)」を数学的に探し出すことで、収益を上げるという手法です。

そして、その具体的な方法論として取り上げられているのが、本書の主な内容である『トレンドフォロー』という考え方です。

中には、この『トレンドフォロー』という言葉を聞いただけで、「投機だ」と切り捨ててしまう人もいるかもしれません。

しかし、個人的には、そんな食わず嫌いをせずに、ぜひ読んでみるといい本なのではないかと感じました。

それに、『トレンドフォロー』という考え方は、人生にも応用できるという話が面白かった。

本書の著者であり投資家でもある、ラリーハイトは、人生そのものもトレンドフォローの考え方で生きてきた。

損は切って、利益は大きく伸ばせ。

この本では、難しい理論や数式というのはほとんどありません。

ラリーハイトの人生を振り返りながら、『トレンドフォロー』という考え方が学べるとても面白い本でした。

それに、なによりも読みやすかった点にとても親しみを持て、読み終わった時には、「これはおすすめの一冊だな」と思いました。