ライフサイクルに合わせて、レバレッジを調節する運用法

ライフサイクル投資術のポイントは、レバレッジをかけた株式投資です。ただでさえリスクが高いと言われていてる株式投資に、レバレッジかけることで、さらにリスクが大きくなっている投資法です。

ただそのレバレッジをむやみやたらに賭けていくのではなく、ライフサイクルに合わせて調整していくというのが、本書のポイントになります。

つまり、ライフサイクルに合わせて、レバレッジの比率を調整していくというのが本書の内容です。

似たような仕組みを持つファンドとしては、ターゲットイヤーファンドが挙げられます。

ターゲットイヤーファンドとは、年齢に合わせて、株式投資の投資割合を調節していく投資信託です。

例えば、若いうちはリスク許容度が高いと考えられるため、株式投資の比率を高く設定し、現役引退に向けて、株式投資の比率を徐々に引き下げながら、比較的安全な資産と考えられている債券投資の割合を増やしていくという仕組みになっています。

「年齢というターゲットに向かって、徐々にリスク資産の割合を調節していく」ということで、ターゲットイヤーファンドと呼んでいるわけです。

ライフサイクル投資術とは、このターゲットイヤーファンドの考え方に近く、一定の年齢に向かって次第にレバレッジの比率を下げて、リスクを調整していくという考え方です。

つまり、ターゲットイヤーファンドを、より好戦的にしたものになります。

ライフサイクル投資術

リスク許容度が高いと考えられる若いうちは、レバレッジを使って株式投資を行い、年を経過するとともに徐々にレバレッジ比率を引き下げていく。

普通に考えれば、期待リターンが高い資産の株式投資に、倍掛けしている分、かなり高いリターンが狙えるだろうと思うものです。

このライフサイクル投資術で投資をした場合で様々な検証を行ってみると、予想通りにターゲットイヤーファンドなどよりもリターンが高くなってくることがわかるそうです。

そして、さらに重要な点が、期待リターンが高まるだけでなく、なんとリスクも減っているという結果になっている所が、この投資法の大きなポイントなのだそうです。

「株式投資にレバレッジをかけているのに、リスクが減っている?」

意外な結果ではありますが、長期的な結果だけを見るなら、おそらくそうなるだろうというのは、なんとなく想像できなくもありません。

長期投資という時間分散がリスク軽減の大きなポイントに!

長期投資という言葉をよく聞きます。投資は短期的に行うのではなく、長期的に行っていくことで、リスクが小さくなると言われています。

ちなみに、ここで言うリスクとは、「どのくらいの大きさの値動きがあるのか」という事ではなく、最悪の成績でも何%のリターンになるのかという考え方で使われています。

たとえば、20年という長期投資をした場合、その途中経過は無視して、20年後のリターンだけを見て、最悪のケースで何%のリターンになっているかということに注目しています。

たとえば、ターゲットイヤーファンドで運用した場合の、20年後に最悪のケースでは、プラス10%だったけれど、ライフサイクル投資術を利用すると、20年後のリターンは最悪でもプラス15%になっているといった意味になります。

ただし、運用期間の途中経過は全く無視しているので、もしその20年間の期間で、もし投資資産が1/3になってしまったとしても、そこは考えていないというところには注意が必要だと思われます。

当然のことですが、20年間の値動きを問われれば、ライフサイクル投資術は、レバレッジをかけている分、ターゲットイヤーファンドなどよりも大きなマイナスとなる時期が出てくることがあるはずです。

しかし、長期投資に徹するのであれば、最終目的地以外の値動きは、言ってみればどうなろうと関係ないというのが、この投資法の基本姿勢です。

正直に言えば、この途中経過で大きな損失を負った際に、シミュレーションでやっているように、そのまま何事もなかったかのように投資を継続できるのかという点には、少し疑問を感じる所ではありますが。

この本は、レバレッジをかけた株式投資という考え方に、リターンだけでなくリスク管理という面からも、新たな着眼点を与えてくれました。