生命保険は必要なのか?

お金のことについて勉強すると、必ずと言っていいほど目にすることが多いのが、『生命保険はいらない』という言葉です。

この本は、そんな疑問に対して、商品販売をしない保険の相談を行っている著者と、医療関係の研究をしていて、医療保険の確率などについて詳しい大学教授による解説になります。

そもそも生命保険は必要なのか?

実は、本書でも説明しているように、今保険に加入している多くの場合において、「本当は必要ない」というのが、この本の著者の意見です。

そもそも保険の目的とは、自分の力だけではどうしようもないリスクを回避するために、費用を負担して、そのリスクを保険会社に肩代わりしてもらおうとする行為です。

つまりは、保険という商品は、その目的からして金銭的なリターンを望むというものではなく、基本的に費用を負担して第三者に肩代わりをお願いしているサービス商品といえるので、その仕組からして決して得するようなものではないというわけです。

しかし、そんな得しないというイメージが先行してしまっては、保険会社は、保険が売れなくなってしまうので、様々な営業努力によって、そのイメージを隠し、お得に『見せかけて』販売しているのが今の保険の在り方です。

その結果、お金のことについてあまり知識のない人の場合には、必要以上に保険商品を購入してしまっていることが多くなっているというわけです。

金融商品だという意識で販売されていない金融商品

本書の中でも、ちらりと触れていますが、生命保険という商品は、金融商品であるはずなのに、金融商品であることをあまり表に出さず販売されている。

金融商品というのは、預金でも株式でも債権でも、そして投資信託であっても、なんでもリスクとリターンの確率や根拠を考えながら、投資するに値するかどうかを判断して購入しているものです。

つまり、儲かるかどうかの期待値という数字の判断基準があってこその商品です。

しかし、生命保険の場合には、その数字も根拠もあいまいで、実際には数字を無視し「感情」で販売され、そして買わされてしまっているケースがほとんどです。

本書の例を用いれば、医療保険という商品のリスクとリターンを考えてみると。

医療保険に支払う保険料というコストと、病気になり入院したりするリスクや確率とその結果得られるリターンである保険金を計算すると、圧倒的に損をする可能性のほうが高い。(詳しくは本書を読んでみてください。)

リスクとリターンを計算する、金融商品的な考え方で医療保険を購入するとしたら、はっきりいって投資価値は一切ないというわけです。

しかし、なぜかこの金融商品に投資をしている人はとても多い。もう日本人にとっては常識といえるぐらいのレベルで民間の医療保険に加入している感じです。

なぜこんなにも損する可能性が高い医療保険が売れるのか、その最大の理由は、「不安」です。

本書でもそのことに触れていました。

「不安」があると、人は非合理的な判断を下しやすい。(数字を無視する)

プロスペクト理論という有名な行動経済学の理論でも、損失という不安への感情は、利益を得ることよりも強く反応しやすいとされています。

保険会社は、この人の性質を利用して、保険を金融商品として売るのをやめ、「不安」を売ることで保険を販売し成功している。

「この商品に入ると、何%の確率で損をします。ただし、いざというときには何千万円という保険金が出ます、もしものときにはとても役立つので損失覚悟で支払うことをおすすめします。」といった数字などを使った合理的な感じの説明ではなく。

「保険に加入していないと、いざというとき奥さんや子供が路頭に迷うことにもなりかねない。そんな思いさせたくないですよね。」などと、数字そっちのけで感情をあおられたという経験はありませんか?

CMやパンフレット、保険の営業のすべてが、こういう雰囲気を感じます。

だから、感情ではなく数字から保険という商品を見ている人は、あまり保険に加入していないことの方が多い。

本書の中でも度々登場してくるのですが、保険係数などを計算して保険という商品を作る仕事している人は、以外にも自分では保険に加入していないという話もありました。

プロは保険に加入しない、ということのようです。

お金に詳しくなってくると、まず保険から見直すことになるのは、ある意味当然の成り行きなのかもしれません。